| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-095 (Poster presentation)

絶対単為生殖型Daphnia pulex 2クローンの季節的消長と経年変化

*八巻健有(東北大・理),熊谷仁志,大槻朝,牧野渡,占部城太郎(東北大院・生命)

ミジンコDaphnia pulexは、各地の池沼に広く生息する甲殻類の動物プランクトンである。D. pulexは、通常は単為生殖によって繁殖するが、有性生殖を行って休眠卵を生産することで不適な環境を乗り越える生活史を有している。しかし、本種にはオスとの交尾を伴わない、単為生殖により休眠卵生産を行う絶対単為生殖型の系統が存在する。私たちの研究によれば、日本に分布するD. pulexは絶対単為生殖型で、しかもD. pulicariaとのハイブリッド(以下便宜的にD. pulexと記す)であることが判っている。日本列島にはこのような絶対単為生殖型の系統が複数分布しており、一部の池沼、例えば山形県白鷹湖沼群の畑谷大沼では2つの異なる系統が同所的に生息している。そのような池沼では、2つの系統は、絶対単為生殖型であるが故に互いに独立した個体群を形成していると考えられる。一般に、動物プランクトン群集では消費型競争が強いと考えられているが、それにもかかわらず2つの異なるD. pulex個体群が同所的に生息しているのは謎に満ちている。同所的に生息している理由の一つは、系統により至適環境が異なり、時空間分布が異なることがあげられる。この可能性を検証するために、本研究では、畑谷大沼に出現するD. pulex個体群を対象に毎月採集を行い、分子生物学的手法によりクローン識別を行うことで各個体群の季節変動と鉛直分布を調べた。本発表では、2つのD. pulex個体群の識別と時空間動態の違いについて報告するとともに、その共存機構について議論する。


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