| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-097 (Poster presentation)
中・大型の陸棲哺乳類にとって,河畔林や防風林などのコリドーは孤立した生息地間の移動を容易にする通り道として機能する.特に農業景観においては,河畔林や防風林およびヘッジローが様々な哺乳類のコリドーとして機能することが知られている.林床植生などの局所環境スケールの特徴や,面積などの景観スケールの特徴がそれぞれ異なるこれらの林が,いずれもコリドーとして機能するという事実はとても興味深い.これに加えて,特定の動物種がより頻繁に利用する林の特徴が明らかになれば,目的に応じたより効果的なコリドー管理が可能となるだろう.そこで本研究では,農業景観におけるエゾシカCervus nippon yesoensis およびキタキツネVulpes vulpes schrenckiによる河畔林および防風林の利用頻度を林分タイプ間で比較し,各種が主に利用するコリドーの特徴を調査した.調査地は北海道十勝地方芽室町とした.芽室町において河畔林や防風林は広大な農耕地のマトリクスの中に網目状に存在している.哺乳類のコリドー利用頻度はカメラトラップ法によって調査した(河畔林n=14,防風林n=13).調査は2013年4月~11月に行なった.尤度比検定の結果,コリドーの利用頻度は両種とも河畔林において有意に高くなった.この結果を踏まえ,両種のコリドー利用に影響しうる要因を調べることで,各種が頻繁に利用するコリドーの特徴をより明確にできるかもしれない.今後は局所環境スケールおよび景観スケールの要素と各種の撮影頻度との関係について解析する.