| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-098 (Poster presentation)
成長に伴って体色変化が起こる動物は魚類や爬虫類や昆虫などで知られている。しかしその変化が起こる要因については種内競争の緩和やカニバリズムの防止、対捕食者回避戦術の違いなど様々な焦点から議論されてきたが未だはっきりとしていない。今回佐賀県産のニホントカゲを用いて成長に伴う体型の変化と体色変化(黒色ストライプから茶色)がヘビ捕食者からの回避行動の変化との関係性を捕食回避実験と野外調査から検証する。捕食者回避実験では、1次戦術から2次戦術の切り替わる時期を求めるためにトカゲの静止状態からの逃走開始間合い及び逃走時の最高速度を求めた。結果、黒縞色個体は茶色個体よりもヘビ捕食者から逃走開始間合いは遠い傾向を示した。一方、体重(x軸)と体重別最高速度(y軸)との関係を調べた結果、放物線に近似した結果7.25g前後のときに最も速く走ることを示した。そして7.25g未満の個体は黒縞色個体が多い傾向を示した。一方で7.25gよりも重い個体は茶色い個体が多い傾向であった。野外調査では成長に伴う形態変化を調べるために体重と体色、そして頭胴長を計測した。体重(x軸)と頭胴長(y軸)との関係を調べた結果、対数関数に近似した。野外の集団も7.25g以上の個体は茶色個体が多く、7.25g未満の個体は黒縞色個体が多い傾向を示した。次に完全尾の個体を用いて肥満度BMIを計測した結果、7.25gよりも重い個体は7.25g未満の個体に比べて肥満度BMIが大きい傾向を示した。以上のことから成長に伴って逃走時の最高速度の限界点に到達するまで(黒縞色で華奢な体型)は2次的防御を早期に行い、到達後は(茶色でがっちり体型)2次的防御を行うのが遅いことから一次的防御を長く行っていると考えられる。この防御戦術の変化は成長に伴いう逃走時の最高速度の変化の影響を受けると考えられる。