| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-106 (Poster presentation)
生理学的に見た際,水生適応は小型哺乳類において特に困難である.そのため水生生活に適応的な形質を持つ小型哺乳類は進化学的,生理学的,行動学的に興味深い特徴を多く持っている.水生適応した小型哺乳類の中でも特に体サイズの小さい種が多く含まれる分類群はトガリネズミ型目トガリネズミ科である.トガリネズミ科は他の哺乳類に比べ代謝率が非常に高いため,生息地における気象・気候の変化が他の哺乳類より大きく行動と生存に影響することが知られている.水生適応したトガリネズミ科は主な採餌を水中で行うことから,行動において陸生のトガリネズミ科よりも気象・気候の変化による影響を受けることが予想される.しかし,水生適応したトガリネズミ科において季節変化等を考慮した長期的な野外追跡調査は少ない.
カワネズミは日本で唯一生存が確認されている在来の半水生哺乳類である.本研究では本種を対象動物とすることで,河川環境が水生適応したトガリネズミ科の行動にどのように影響しているか解明を試みた.本種は目視での定量的な追跡調査が困難なため,野外で行動追跡調査を行う際はラジオトラッキング法を用いて本種の行動圏を推測した.1日の行動圏サイズは気象・気候により影響を受け変化した.このことからカワネズミは行動圏サイズを環境条件に対応して逐次変化させることで,河川環境に適応していることが示唆された.
ラジオトラッキング法での追跡中,追跡個体が潜水した際には電波帯の変化が発生した.電波帯の変化を目視追跡により確認を行った結果,追跡個体が隠れ家に滞在中でも電波帯の変化により活動性判別が可能であることが判明した.これにより本種の活動性を判別・記録した.今回,個体の情報および周辺環境との関係性について解析を行ったので行動圏の結果とともに本種の活動性に影響する要因について報告する.