| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-107 (Poster presentation)

キタゾウアザラシが教えてくれる中深層性魚類の三次元分布様式

*安達大輝(総研大・極域科学),山道真人(コーネル大学)

水深 200-1000 mに生息するハダカイワシなどの中深層性魚類の多くは、夜間に浮上し表層性プランクトンを捕食することから、海洋の表層・中深層生態系を繋ぐ架け橋として重要な役割を担っている。しかし外洋での直接観測は困難なため、中深層性魚類の分布に関する知見は極めて乏しい。そこで本研究では、北太平洋において中深層性魚類を潜水して採餌する長距離回遊中のキタゾウアザラシの採餌行動から、中深層性魚類の分布様式を間接的に推定した。水中の三次元採餌行動を調べるために、小型記録計(顎加速度記録計・GPS発信機・地磁気加速度記録計)を米国カリフォルニア州にてキタゾウアザラシに装着し、約80日後に回収した(n = 4)。その結果、84%の潜水で採餌イベントが記録され、一潜水内における採餌イベント間の直線距離(採餌間距離)は0.4-1032.6 m の範囲に渡って分布していた。採餌間距離の頻度分布は二山構造をしており、Bout-Criterion Interval(BCI)を用いることで二つの分布に分離することができた(BCI = 22.6±10.3 m)。BCIで推定された閾値以下のデータ数が全体の77.8±4.3%を占めていたことから、中深層性魚類は数十メートル以内の空間スケールでパッチを形成する集中分布をしており、キタゾウアザラシはそのパッチ内で多く採餌していたことが示唆される。また、パッチ間の距離の頻度分布が冪乗則ではなく指数則に従っていたことは、中深層性魚類のパッチがランダム分布していることを示唆している。これらの結果は外洋における中深層性魚類の分布様式に新たな知見をもたらすだけでなく、長距離回遊中に中深層に潜って採餌するキタゾウアザラシの採餌戦略が成立する一因を示していると考えられる。


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