| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-109 (Poster presentation)

ヤマガラにおける餌資源配分と雛間競争

*早瀬晴菜, 近藤崇, 肘井直樹(名古屋大・生命農・森林保護)

未成熟状態で孵化する晩成性の鳥類にとって、親から子への給餌は非常に大きな役割を持つ。親が子に投資できる餌の量は労力などの点から有限であるため、親はできるだけ多くの子を残せるように餌資源を配分する必要がある。また、1回の繁殖で産まれる複数の子は、同腹の兄弟姉妹と餌資源をめぐって競争することになる。同腹の子の間の競争と給餌については、鳥類で多くの研究が行われてきた。それらにより、雛間競争と給餌雛決定には、begging(餌乞い行動)や巣の中での雛の位置、雛の体格などが関わっていることが明らかにされてきた。しかし、これらが複合的に影響する中でどのように競争がはたらき、その結果各雛にどのように餌資源が配分されているかについてまでは、まだ十分に解明されていない。そこで本研究では、ヤマガラ Poecile varius を対象として、巣箱内に設置したカメラを用いて、親から子への餌資源配分と雛間競争のしくみを調査した。

調査は、愛知県豊田市の名古屋大学稲武フィールドの40~50年生のカラマツ人工林で行った。巣箱は2013年に13個設置し、営巣したうちの1つがいについて、雛の体重測定(カメラでの観察前と巣立ち前の2回)と、巣箱内部の小型CCDカメラによる1日の連続的録画撮影を行った。画像から、1回の給餌ごとに各雛のbeggingの強さと巣の中での位置を評価し、また1日の各雛への給餌回数と給餌量を測定した。

その結果、雛が13日齢の1日についてみたところ、小さな雛ほど強いbeggingを行い、大きな雛ほど親に近い位置にいる傾向があることがわかった。またbeggingが強いほど、また位置が親に近いほど給餌されやすかった。さらに1日の配分は、回数・量ともに大きな雛ほど多い傾向がみられた。本発表ではこの結果から、このつがいにおける1日の餌資源配分様式と、雛間競争がどのようなものであったかについて考察する。


日本生態学会