| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-114 (Poster presentation)
尾道市旧市街地は、ノラネコに餌を与える住民や観光客が多く、また高齢化に伴う過疎化でネコが棲みつきやすい廃屋が増加したことから、かなりの頭数のネコが生息していると言われているが、その個体数については明らかになっていない。そこで本研究は、ルートセンサス法を用いて同地域におけるノラネコの行動を調査することで、同地域に生息するネコの基礎データを収集し、1年間の移入出数と定住率を推定することを試みた。
ルートセンサス調査は、2011年5月~2013年4月までの2年間に計137回実施した。1回の調査は10:00~16:00の3時間とし、6kmのルートを歩きながら、目視でネコの個体識別を行った。観察した個体は、山根ら(2011)の方法に基づいて、発見場所、外貌の特徴等を個体識別カードに記録した。これらのカードを約1年間かけて集積することで「尾道市旧市街地ネコカタログ」を2012年4月に完成させた。その後の1年間の巡回(2012年5月~2013年4月)は、このカタログに基づいて個体識別を行い、地域内で出生したと思われる個体や移入個体のカードを追加した。一方で同地域から移出または死亡したと判断できる個体数を推定するために、1年目のデータを用いて定住基準日数を算出し、この基準を超える個体については移出・死亡したものと判断した。
「尾道市旧市街地ネコカタログ」には、123頭の個体が収録された。2年目の調査において定住基準日数の139日を超えた個体は83頭で、すべて移出または死亡したものと判断した(3年目のデータに基づく検証から誤差率9.8%)。一方、地域内で出生した個体が27頭、他地域から移入した個体が89頭と推定されたことから、同地域では1年間に33頭のネコが新たに加わったものと考えられた。さらに定住率は、地域内で出生したと思われる個体が48.1%、他地域からの移入個体が22.4%と推定された。