| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-116 (Poster presentation)

イノシシ捕獲用箱ワナへのシカや小型野生動物の侵入による捕獲率への影響

*伊藤郭里(広大・生物生産),谷田 創(広大・院・生物圏科学)

広島県呉市安浦町の宿泊施設「グリーンピアせとうち」はイノシシが敷地の芝生を荒らすなど問題となっており、呉市農林振興課では敷地内に箱ワナを設置してイノシシの捕獲に努めている。しかしながら捕獲率が低いので、期待された成果があがっていない。その原因を明らかにするために、箱ワナをビデオカメラで監視した。

調査対象の箱ワナは、宿泊施設から約200m離れた森の中に設置されていた。箱ワナの稼働と誘引餌散布のタイミングは呉市委託の地元狩猟者がフィールドサインを観察しながら決定した。監視用暗視ビデオカメラは箱ワナの入り口が映るように取り付け、画像データをワイヤレスで約20m離れたタイムラプスレコーダに転送し、連続で録画した。調査期間は、2012年10月10日~12月12日の約2カ月間とした。

2カ月間における箱ワナの周辺への出没及び箱ワナ(常に稼働させているわけではない)内への侵入頭数は、シカ1265頭、タヌキ383頭、イノシシ165頭、アナグマ142頭、野犬18頭で、その割合は、シカ64.1%、タヌキ19.4%、イノシシ8.4%、アナグマ7.2%、野犬0.9%であった。その内、捕獲された動物はシカ3頭、イノシシ3頭、アナグマ2頭で、捕獲率(出没・侵入頭数に占める捕獲頭数の割合)は、シカ0.2%、イノシシ1.8%、アナグマ1.4%と非常に低かった。また、仕掛けが作動したにも関わらず捕獲に至らなかった(動物が捕獲されていないのにワイヤーがはずれてドアが閉じていた)ケースが、8回あり、シカがドアの閉まる直前に逃げ出したり、アナグマが侵入後に箱ワナの編み目から脱出していた。以上の結果から、今後、捕獲率を向上させるためには、1)大型動物だけを捕獲するようにワイヤーの設置位置を工夫すること、2)箱ワナの稼働頻度を増やすことが有効であると考えられた。


日本生態学会