| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-121 (Poster presentation)
親の給餌は親子にとって自身の適応度を高める重要な行動の一つである。鳥類では親と子それぞれにおいて給餌する、給餌される際の様々な行動が報告されている。
樹洞や巣箱に営巣するシジュウカラは、給餌の際に巣内の決まった位置に立ち(給餌位置)、巣内の限定された範囲にいるヒナに給餌する。この給餌位置の固定は個体毎に一貫している。このときの給餌の範囲は雌雄間で異なる。給餌位置を固定することによりヒナ間競争が促進する可能性があることは実験的に明らかになっている。一方、どのようなヒナに給餌するのかは雌雄で異なっていることから、雌雄間で給餌に対して利益対立が起こっている事が示唆されている。しかし、これまで給餌位置の固定が報告されているのは、餌を巣に運ぶ際に餌をひとつだけくわえてくる、単一餌給餌種のみである。餌を複数くわえてくる、複数餌給餌種での報告は無い。
演者らは福岡市油山においてシジュウカラおよび同所的に生息する、複数餌給餌種であるヤマガラを対象として、給餌位置の固定の有無を調べた。本研究は、調査地内に巣箱を設置し、ビデオカメラで巣内を録画することによって行った。撮影時間は3時間とし、撮影は1日に1回とした。
以上の調査より、シジュウカラの給餌位置は固定されていたが、ヤマガラでは雌雄で給餌位置を固定していないことが分かった。加えて、ヤマガラは複数のヒナに餌を分割して与えていることも確認された。これらの結果から、給餌位置の固定は孵化斉一性、子の数、餌の分割の可否によって規定されていることが示唆された。本調査は、給餌位置の固定がヒナ間競争を激化させているという仮説を支持する結果となった。