| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-125 (Poster presentation)
近年、わが国では野生動物による農作物への被害が深刻化している。広島県では、イノシシによる被害額が野生動物被害全体の85%を占めており、年間5億円にも達している(農林水産省, 2013)。広島県でも特に被害が甚大な呉市では野生動物による被害を減らすために多数の箱ワナが設置されているが、その捕獲率は期待されたほど高くはない。そこで本調査では、赤外線センサーカメラを用いて箱ワナの稼働率を明らかにすることを目的とした。
調査地は呉市安浦町の宿泊施設の敷地内とした。本施設は南側が瀬戸内海に、北側が森林に隣接しており、施設との境界に防護柵は設けられていないので、イノシシやシカが頻繁に侵入し、芝生や植樹などに被害を与えている。敷地内に3基の箱ワナを設置しているが、原因不明の誤作動が多く捕獲率が低い。そこで2013年度の秋から冬にかけて、3基の箱ワナにそれぞれ2台ずつの赤外線センサーカメラを設置し、箱ワナとその周辺に出没した野生動物を撮影した。
主な動物種の出没頻度は、ニホンジカ、タヌキ、イノシシの順に多かった。いずれの箱ワナにおいてもシカは複数頭で出没する傾向にあったが、イノシシの成獣が複数頭で出没することはなかった。また、動物種間で24時間中の出没パターンが有意に異なっていた(p<0.05)。さらに、月間の出没頭数に有意差が認められた(p<0.05)。調査期間中に箱ワナの稼働(ワイヤーを仕掛ける)回数に対して捕獲された回数の割合は、50%程度であった。赤外線センサーカメラにはイノシシの成獣が撮影されていたが、捕獲された動物は、ニホンジカとイノシシの幼獣でイノシシの成獣が捕獲されることはなかった。捕獲の失敗原因の多くが、タヌキなどの小動物により仕掛けが作動してドアが閉じてしまうことによるものであった。