| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-128 (Poster presentation)
群れをつくる動物は群内および群間採食競合の影響を受ける。多くの霊長類では、群れが大きくなると、採食にかける労力を大きくする必要があるので、行動圏面積、採食時間、移動時間および移動距離が増大する。その結果、大きい群れでは出産率が低下する。一方、屋久島海岸域に生息するニホンザルでは、小さい劣位の群れに比べて、大きい優位の群れで出産率が高くなる。これは、群間採食競合の利益が群内採食競合のコストを上回るためと考えられているが、そのメカニズムは検証されていない。本研究では群れサイズが個体の行動にあたえる影響を明らかにするために、異なる大きさの群れに属するニホンザルの採食行動を比較した。対象は屋久島海岸域に生息するニホンザル 2 群である(大きい群れ: 30-38 個体、小さい群れ: 12-15 個体)。2012 年 10 月から 2013 年 4 月の間、2 群に属するすべての成体メス(9-13 個体)を個体追跡し、直接観察を行った。毎分、追跡個体の活動を記録した。採食については、採食時間、採食品目、採食樹の体積、同一採食樹内個体数を記録した。また、GPS を用いて、追跡個体および採食樹の位置を記録した。小さい群れは大きい群れに比べて、行動圏面積が小さく、採食時間割合が小さかった。しかし、小さい群れは移動時間割合が大きく、移動距離が長かった。利用採食樹数、採食樹間距離、採食樹利用(採食樹滞在時間、同一採食樹内個体数、採食樹サイズ)に群間で違いはなかった。先行研究による予測とは異なり、小さい群れの移動コストが大きかった。屋久島海岸域においては、移動コストの増大が群間採食競合におけるコストとなっており、小さい群れに属するメスの消費エネルギーを増大させていることが示唆された。