| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-132 (Poster presentation)

角度統計モデルと海鳥の軌跡データを用いた個体間相互作用の推定

*後藤佑介(東大・農),依田憲(名大・情報文化),佐藤克文(東大・農),島谷健一郎(統数研)

近年、動物装着型機器によるトラッキング技術の発展により、様々な動物の経路データが得られるようになった。これらの経路データは、動物の行動圏などを知る事に用いられてきたが、高精度で高速サンプリングされた移動データには、動物の意思決定や動物が置かれた環境等の情報が含まれており、適切な解析手法を用いればそれらを推定できると考えられる。現在、動物の移動軌跡の解析手法として、進行方向が1ステップ前の自分の方向の周りで揺らぐCorrelated Random Walkや特定の目標方向に進行方向が偏るBiased Random Walkなどのランダムウォークモデルが広く用いられている。しかし、動物の進行方向に影響を与える要因が複数存在する場合、それらを一度にモデルに組み込むことが困難であった。これは角度変数が周期性を持つためである。

本研究では、角度の和をベクトル和で扱うことで、進行方向に影響を与えると思われる複数の要因を同時に考慮し、各要因の重要性を実データからモデル選択により推定する角度統計モデルを構築した。これにより、進行方向に影響を与える要因として、直前だけでなくkステップ前までの自分の進行方向を加えることで、CRWをk階のマルコフ連鎖へ拡張することが可能となった。さらに、他個体の進行方向を加えることで、個体間の相互作用を推定することが可能となった。

2羽のカツオドリ幼鳥のGPS軌跡データに本モデルを適用し、モデル選択により2羽間の相互作用の有無を推定したところ、複数の飛翔区間において常に一方の個体がリーダーで、他方が追従者となり、個体間の順位関係が固定されていたと思われる結果が得られた。我々の手法は軌跡に影響を与えると思われる要因を、仮説に応じて加えられる柔軟性を持つため、今後軌跡データの標準的な解析手法となる可能性がある。


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