| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-137 (Poster presentation)

アフリカ熱帯林における大型類人猿ボノボの生息地利用:植生の異質性と人為的撹乱への着目

寺田佐恵子(京大・理),Janet Nackoney (Univ.Maryland),坂巻哲也,古市剛史,湯本貴和(京大・霊長研)

大型類人猿ボノボは、アフリカのコンゴ盆地にのみ生息する絶滅危惧種であり、正確な分布域や生息地選好性は明らかでない。本研究では、ボノボが植生と人為的撹乱の程度が異なる複数の森林タイプをどのように利用しているかを明らかにするために、遊動、採食、寝床の3つの利用方法に着目し、ボノボ1群の1年間の遊動域利用を調べた。コンゴ民主共和国ルオー学術保護区ワンバにて、2007年8月から2009年9月に対象一群を追跡し、毎分の遊動場所、そこでの採食の有無及び採食品目、及び夜間の寝床を特定した。また、森林被覆率と地面浸水の有無の二つのGISデータから、遊動域を、原生林、二次林及び湿地林の三つに区分した。結果、遊動域の6割を原生林が占め、遊動・採食・寝床の全てについて、遊動域内の面積比率に比して、原生林を高頻度で、二次林と湿地林を低頻度で利用していた。一方、遊動中の採食頻度は、二次林で高く、湿地林で低かった。また、二次林でのみ採食物の8割を草本が占め、湿地林でのみキノコ食が高頻度で確認された。さらに、追跡と同時期の原生林の月ごとの落下果実量が各森林タイプでの採食頻度に与える影響を調べた結果、原生林の果実量減少に伴い、二次林の採食頻度が増す傾向が示された。寝床は主に一次林であったが、湿地林の遊動頻度の高い月のみ湿地林で寝る頻度が高かった。以上より、追跡群は、果実が多く人為的影響の少ない原生林を選択的に利用しつつ、果実欠乏期には二次林の草本を採食場所として活用し、固有の餌資源を伴う湿地林を寝食を行うメインの遊動場所として季節的に利用することが示された。ボノボの利用頻度が低い人為的影響の大きい場所や湿地林の生息地適性・機能について更なる検討が必要である。


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