| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-141 (Poster presentation)
大規模な人為的攪乱を免れてきた自然性の高い森林域には大径木が存在し、植生の階層構造が発達している。そのような森林域は、多様な動植物の生息・生育場所となる倒木や樹洞などのマイクロハビタットに富むため、生物多様性保全上の重要性が高い。本研究では、ブナの自然分布北限域に近い北海道黒松内低地帯の添別ブナ林(67ha)を対象地として、大径木の集中する森林域を空間解像度の高いリモートセンシングによって省力的に把握する手法を開発した。そのために、特定の空間スケールにおける樹冠の平均的な大きさを示す「樹冠サイズ指数」を画像処理によって算出し、実際の樹木サイズおよび植物の種多様性の指標としての樹冠サイズ指数の有効性を検証した。
1/15,000空中写真(BGR、ピクセルサイズ:0.4m)と10m DEMの画像分類により、林冠ギャップおよび谷筋の森林域を解析対象から除外した。そのうえで、空中写真画像にオブジェクトベース画像解析を施して単木の樹冠を識別し、半径20mの円形バッファに含まれる樹冠の面積の平均値を「樹冠サイズ指数」として算出した。対象森林域の現地踏査により、高木層の被度、高木層を構成する立木の胸高直径と樹高、林床植生の種組成を記録し、樹冠サイズ指数との関係を解析した。
樹冠サイズ指数は高木層の胸高直径および樹高、高木層におけるブナの被度および森林性の林床植生の種数に対して有意な正の効果を示した。林床植生のクラスター分析および指標種分析の結果、樹冠サイズ指数の高い森林域はツルシキミなどブナ林に特徴的な種で指標された。以上の結果より、樹冠サイズ指数は大径木の集中する生物多様性保全上の重要性が高い森林域を抽出する手法として有効であることが示唆された。