| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-149 (Poster presentation)
ホンゴウソウAndruris japonica (Makino) Giesenは、葉緑素をもたない菌類従属栄養性の植物で、緑色植物と共生するアーバスキュラー菌根菌から炭素化合物を獲得すると考えられている。本種は環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されているが、生態については未解明な部分が多く、保全に関する研究も皆無である。2009年に広島県呉市の一般廃棄物処分場予定地でホンゴウソウの群生が確認され、早急に保全対策を講じる必要が生じた。自生地の環境と移植の概要については第60回大会で報告したが、今大会では移植一年後の結果を中心に報告する。
本研究では2012年4月、7月、8月に、自生地の環境要因の測定を行った。ホンゴウソウの地上茎が多く発生しているコドラートでは、リター層が厚い傾向が認められ、リター層内に地下茎が繁茂している様子が確認された。そこで、2012年6月および9月に、過去に発生が認められた場所のリター層を、林床植物ごと40 cm×40 cmのブロック状に切り出し、処分場予定地外の植生などが類似した場所に15ブロックを移植した。
移植一年後の2013年9月に、8ブロックから合計26本の新たな地上茎の発生が認められた。さらに11月に、種子を形成している個体が確認された。移植したホンゴウソウは、冬に地上茎が完全に枯死したにもかかわらず、一年後に新たな地上茎を発生させ、一部では結実するまで成熟した。本種が菌類従属栄養性であり単独で炭素化合物を獲得できないことを考えると、移植先において菌根菌および緑色植物とのネットワークが一部回復し、新たに炭素化合物を獲得していた可能性が推察される。本研究により、リター層ごと移動させる方法によりホンゴウソウを移植できる可能性が示唆された。