| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-151 (Poster presentation)
市民が研究の一部または全ての研究プロセスに従事することを市民科学という。生物多様性の減少の原因になっている様々な影響を明らかにするためには広域かつ長期的なデータの収集が必要である。これらのデータ収集は研究者と行政だけでは不十分であり、市民の協力が不可欠である。
米国では近年のインターネットの急速な発展により、市民から寄せられた広域かつ長期的なデータを科学研究に活用する市民科学が進展しており、その重要性は広く認識されるようになっている。寄せられたデータは生物の生息域のマップやグラフなどに表示され、地域や種などに切り分けたデータをプロジェクトの参加者が入手することも可能にした。データの精度を高める工夫もされており、明確でないデータを確認するフラッグ機能や排除するフィルタリング機能、プロジェクトスタッフと参加者とのコミュニケーションを通じた参加者の教育にも重点が置かれている。
このようなWeb機能を活用した市民科学プロジェクトは米国では数多く実施されているが、日本ではあまり実施されていない。そこで、日本の市民科学を進展させるための要件を明らかにするため、米国と日本のWeb機能を活用した4つのプロジェクトの比較により、日本の現状を明らかにした。その結果、日本においてもWeb機能を用いて観測された地点のマップ化や種の個体数などのグラフの表示などは行われているが、参加者自身が入力したデータの閲覧や参加者を教育するためのコンテンツ、得られたデータを行政の施策や保全に活かす試みがなかったことが明らかとなった。
今後、日本でも参加者の教育に重点を置いたコンテンツやコミュニケーションツールの導入が必要である。また、広域かつ長期的なデータを気候変動や外来種の対策など生物多様性の保全に役立てることを当初から意図したプロジェクトの企画も必要である。