| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-157 (Poster presentation)

霞ヶ浦周辺域における在来および外来フナ類の現状と課題

*三品達平(京大院理),松崎慎一郎(国環研),武島弘彦(東大大気海洋研),荒山和則(茨城県),諸澤崇裕(自然環境研究センター),西田睦(琉球大),渡辺勝敏(京大院理)

コイ科フナ属には,有性生殖をする2倍体集団と,無性生殖の一種である雌性発生をする3倍体集団が含まれる.霞ヶ浦周辺には,関東在来の有性2倍体フナである,準絶滅危惧種のキンブナが生息することが知られている.しかしながら,霞ヶ浦では様々な地域からフナ類が移植されてきており,キンブナへの生態的・遺伝的影響が危惧されるが,その現状はほとんど調べられていない.そこで,本研究では霞ヶ浦周辺から広く採集したフナ類に対し,形態およびmtDNA cytb領域の塩基配列と核DNAマイクロサテライト多型を用いた遺伝的解析と倍数性判定に基づき,フナ類の国内外移入の定量的評価,およびキンブナの保全単位の検討と遺伝子攪乱の影響の評価を行った.その結果,外来フナ類の多くは琵琶湖周辺か大陸由来であること,また3倍体の頻度が非常に高いことが明らかとなった.形態からキンブナと同定される個体はキンブナの分布域とされる関東・東北で多く見られるmtDNAハプロタイプを示し,それらは主に小河川や水路に見られること,キンブナが多く残存する地点では外来フナとの交雑はあまり進んでいないが,個体群密度が低下すると交雑の影響を受けやすくなることが示唆された.今後,キンブナの重要な生息地と考えられる小河川や水路を中心に,有効な保全策を実施していく必要があると考えられる.


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