| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-158 (Poster presentation)
カエル類は水域と周囲の陸域の両方を必要とする独特の生活環を有しており、水‐陸複合環境である谷戸環境に強く依存する生物群の一つといえる。またカエル類は高次捕食者の重要な餌資源かつ広食性捕食者であり、農村生態系において極めて重要な位置を占めている。しかし近年、農業形態の変容や市街化により、谷戸環境の消失や荒廃が進行し、各地でカエル類個体群の消失や減少が報告されている。生物種の生息情報と環境構造との対応関係を明らかにすることは生物保全策の策定上重要であり、本研究では特に繁殖個体と繁殖地との関係に着目し、谷戸地におけるカエル類の生息量と環境構造の関係を明らかにすることでカエル類保全に寄与することを目的とした。
調査対象地は良好な谷戸環境が現存する東京都あきる野市横沢入里山保全地域をとした。調査は調査地内の6谷戸に点在する湛水田27地点で行った。対象種は調査地を繁殖地として利用するヤマアカガエル(Rana ornativentris) 、シュレーゲルアオガエル(Rhacophorus schlegelii)2種とし、繁殖期に調査地内を踏査し、湛水田ごとの繁殖個体量を調べた。ヤマアカガエルは卵塊数計測により、シュレーゲルアオガエルは鳴き声確認により個体量調査を行った。環境構造は湛水田ごとの面積と抽水植物の植被率の2点を記録した。
解析は、カエル種ごとに個体量データを応答変数、環境構造データを説明変数として一般化線形モデル(GLM)を構築した。解析の結果、ヤマアカガエルでは面積が有意に正の値を、シュレーゲルアオガエルでは面積・植被率ともに有意に正の値を示した。繁殖個体量の多い湛水田は、ヤマアカガエルでは面積が大きい場所、シュレーゲルアオガエルでは面積が大きく、抽水植物の植被率が高い場所であることが示唆された。これらの結果を踏まえカエル類に好適な繁殖地の環境について総合的な考察を行う。