| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-159 (Poster presentation)
河口域は生物生産性が高く、様々な生物の生息場として重要な役割を担っている。その一方で、河口域は人為的な開発が活発に行われる領域であり、それに伴い河口域に生息する多くの生物は絶滅の危機に瀕している。そのため、河口域生態系の保全、再生、管理は急務である。近年ではヨシ原や干潟の再生事業が実施されている。このような再生事業は、潮間帯上部から潮上帯に重点を置いたものが多く、潮間帯下部から潮下帯に重点を置いたものは少ない。その原因の1つとして、「潮間帯下部に生息する生物が、どのようなハビタットを利用しているか」が解明されていないことが挙げられる。そこで本研究では、河口域潮間帯下部のハビタットの特性を明らかにすることを目的とした。日本でも有数の汽水域生物多様性を誇る1級水系である球磨川、佐波川、および揖保川を調査対象とし、それぞれの河川で91地点、44地点、49地点、合計184地点で網羅的なカニ類・ハゼ類の定性調査を実施した。また各地点で塩分、河床の礫分、砂分、泥分含有率と地盤高を調べた。定性調査の結果、3水系でカニ類が計31種、ハゼ類が計29種確認された。それらのうち、2河川以上で確認され、かつ河口域で再生産をおこなう種に限定してクラスター分析を行ったところ、184地点は7つのタイプに区分された。各タイプの地盤高に着目すると、7タイプのうち、5タイプが潮間帯下部に属するハビタットであることが示された。つまり、カニ類・ハゼ類のハビタットとしては、潮間帯下部には多様なタイプが存在することが示唆される。この結果から、河口域の生物多様性を考慮する上で、潮間帯上部だけではなく、潮間帯下部のハビタットも極めて重要であると言えるだろう。結果の詳細は本発表にて示したい。