| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-163 (Poster presentation)

長野県伊那盆地の水田地域における水生昆虫群集と水辺環境との関係

*大澤崇季(信大・農),大窪久美子(信大・農),渡辺太一(信大院・総合工),大石善隆(信大・農)

本研究では、水田地域の水辺環境毎の水生昆虫群集を明らかにし、比較、考察することから中干し時期の他の水辺への退避状況や、保全策について検討するため、長野県箕輪町福与地区において、水田及び土水路、開放、用水路、用水路のたまりの5つの環境で7月上旬~9月上旬までの10週間に捕獲調査等を実施した。

Shannon-Wienerの多様度指数を用いて平均多様度、相対多様度、全多様度の算出を行った結果、全ての値で土水路が最も高かった。水辺環境に対しての選好性を選好度指数で検討した結果、各々の環境で特徴的に出現する種が明らかになった。また、生活環の中で複数の環境を利用する種が鞘翅目で多く確認された。調査地点及び、種群の分類を検討するためTWINSPAN解析を行った結果、調査地点は、たまり優先土水路系統、土水路・開放系統、水田系統、たまり系統に分類された。水生昆虫群集は土水路型、土水路優先・水田・開放型、共通型、水田・開放型に分類された。各群集の特徴としては分類群に偏りがみられず、出現種数の少ない群集、全てのタイプの種が多く出現し、蜻蛉目や半翅目が多く出現する多様性の高い群集、土水路タイプの種がほとんど出現しない共通・水田群集、ほとんど昆虫の捕獲できない群集であった。総個体数からみた季節消長では、中干し時期に水田の個体数が減少し、土水路で増加していた。また、種毎の季節消長から土水路に退避可能な種とそうでないものがあった。本研究より土水路は、水田地域で常時湛水している水域として多様性維持や、代替水域、繁殖場所の機能をもつことが示唆された。また、水田や土水路、用水路が連続的に配置されることで、昆虫が各々の特性に合った環境を重複利用としていることが明らかにされた。


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