| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-168 (Poster presentation)

湿地履歴に着目した水湿生植物保全のための農業用水路の評価

*長谷川友亮(新大院・自然科学),松本さおり(新発田市),石田真也(新潟県),高野瀬洋一郎((株)グリーンシグマ),紙谷智彦(新大院・自然科学)

越後平野は、かつて、その大部分が氾濫原湿地であり海抜以下の湖底標高をもつ潟が多数存在していた。潟の排水により農地が整備され、農業用水路の多くがコンクリート水路へ改修されつつあるなか、昔ながらの土水路には多くの希少種が確認されている。土水路の底はその土地の種子源に接していることから、土地履歴は土水路内に出現する植物相に影響すると考えられる。そのために、希少な水湿生植物が生育する保全すべき土水路の評価が必要となっている。

本研究は、水系区分・地形・湿地履歴・土水路環境の観点から水湿生植物の保全にとって好ましい環境条件を持つ土水路を把握することを目的とする。

越後平野中西部21地域42の農業用土水路を対象に、景観スケールで湿地履歴と土水路の標高を調査し、地形解析を行った。各土水路の環境は、①水系(西川水系、信濃川・中之口川水系・矢川水系)、②水路幅、③水路高、④水深、⑤利用形態(用水路・排水路)を調べた。植生調査は、1m2のコドラートを連続して10個設置し、2010年6月と10月に出現した水湿生植物の種名を記録し、生活型(一年生、越年生、多年生)にタイプ分けした。

出現種数(応答変数)に対する各要因(説明変数)の効果の推定は階層ベイズモデルを用いた。

湿地跡地に位置していた土水路は有意に標高が低かった。地形解析の結果から、土水路を山地形、平地形、段地形の3つにタイプ分けした。10月の総種数と越年生種数に水路標高と種数に負の相関があった。標高の低い平地形タイプでは10月の総種数と水路標高の間に最も高い負の効果があった。水系では、種数-水路曲線から6月と10月において、最も総種数が多かった西川で最も高い正の効果をもっていた。これらの結果をもとに保全すべき土水路の評価を行った。


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