| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-172 (Poster presentation)
半自然草原は日本において火入れや草刈りなどの攪乱により維持されているが、近年そうした攪乱レジーム(草刈りの頻度や時期)の変化により多くの草原生希少草本が絶滅の危機に瀕している。こうした草原生希少草本の生育に適した攪乱時期の特定は保全策の策定に必要不可欠であるものの、攪乱の時期と植物繁殖の関係を実証した研究例は非常に少ない。本研究では環境省レッドリスト(2012)で準絶滅危惧種に指定されている多年生草本スズサイコ Vincetoxicum pycnostelma を用いて、草刈り時期が本種の繁殖及び遺伝的多様性に与える影響を明らかにした。
近畿及び東海地方において草刈り時期の異なる集団を15箇所選定し、各地で送粉成功(受粉花数)、栄養成長(茎長及び地際直径)、繁殖成功(花序痕数及び結果数)を調査した。さらにそのうち14箇所において葉サンプルを採集し、SSRマーカー9座を用いて各集団における遺伝的多様性(ヘテロ接合度期待値及びAllelic richness)を評価した。
その結果、送粉成功は草刈り時期や回数によって影響を受けていなかった。一方、栄養成長及び繁殖成功は、本種の開花結実期である7-9月に全面的な草刈りが行われた集団においていずれも減少傾向が見られ、遺伝的多様性も同様の傾向が見られた。
本研究から、スズサイコの繁殖及び遺伝的多様性には開花結実期の草刈りが大きなインパクトを与えることが示唆された。このことからスズサイコと同様に夏から秋にかけて開花結実する多年生草本に対しても開花結実期の草刈りを考慮した草原管理を行う必要があると考えられる。