| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-176 (Poster presentation)
近年、乾燥地草原において、草原の過剰利用が原因で、家畜嗜好性の低い草本類が優占する問題が生じている。モンゴル草原においても、家畜不嗜好性種Artemisia adamsiiの優占が問題となっている。そのような中で、冬季の火入れや刈取は、休眠芽や再生起点(地上部残渣)の除去により、地表植物(A. adamsii)の繁殖率や成長率を低下させる可能性がある。また、夏季の火入れや刈取においては、A. adamsiiを含む多年生草本を減少させる可能性がある。しかし、モンゴル草原においては、火入れに関する知見の集積は殆どない。
そこで、本研究では、火入れ及び刈取によって、A. adamsiiの衰退が起こる可能性を検証することを目的とした。モンゴル国フスタイ国立公園内のA. adamsiiが優占する荒廃草地において、28×35mのサイトを4サイト設置し、その中に3×3 mコドラートを24個設置した。これらに対して、無処理・火入れ(冬季)・冬季刈取・夏季1回刈取・夏季2回刈取の5処理を4コドラートずつ実施した。処理前に出現種数を、処理後に出現種数・バイオマス・A. adamsiiの花序形成数を測定した。その後、GLMMを用いたモデル選択およびTukey法による多重比較を行い、各処理が与える影響を比較した。
処理の影響が観察されたのは、地表植物のバイオマス・A. adamsiiのバイオマスおよび花序形成数であった。これらはそれぞれ、夏季の刈取(1回)で減少・無処理以外の全ての処理で減少・無処理以外の全ての処理で減少し、火入れで著しく減少するという結果となった。以上のことから、火入れ及び刈取によって、A. adamsiiの衰退がもたらされる可能性が示唆され、特に、冬季の火入れが効果的と考えられた。