| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-185 (Poster presentation)
現在、日本国内には戦後の拡大造林により造成された1000万haの人工林が存在している。しかし、近年の林業衰退の現状を考慮すると、すべての人工林を従来通り経営していくことは困難であり、天然林への転換を視野に入れた新たな森林管理手法の発展が望まれる。また、気候変動の影響による台風の増加・激化から国内の森林における風倒発生のリスクは今後ますます増大するものと考えられ、気象害に強い森林の管理や配置を検討していくことが急務である。人工林化による風倒撹乱の発生リスク増大が著しい森林の特性を解明できれば、森林管理における適切なゾーニングに重要な知見を提供すると考えられる。
そこで本研究は、人工林と天然林における大規模風倒撹乱の発生特性を比較し、風倒撹乱レジームへの人工林化の影響を検討した。2004年の台風18号によって大規模な風倒撹乱が発生した北海道内の人工林・天然林を対象として、風倒撹乱の発生特性を説明するロジステッィク回帰モデルを構築した。説明変数には地形特性(標高・傾斜角・TPI:Topographic Position Index)、林分特性(密度・形状比・広葉樹密度・林齢)を用いた。
解析の結果、風倒リスクは天然林よりも人工林において高いことが明らかになった。人工林・天然林ともに、風倒は斜面上の突出地形に立地する林分や広葉樹率の低い林分で発生しやすかった。人工林では林齢が風倒の発生に強い正の相関があり、より高齢の林分でリスクが増大することが明らかになった。さらに、人工林における風倒リスクは天然林においてもリスクの高い場所で大きく上昇することが明らかになり、減災を目的とした人工林の天然林への転換は、斜面上の突出部に立地する高齢林分でより効果的であることが示唆された。