| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-190 (Poster presentation)

GISによる都市内緑地の生態系サービス定量評価

*鈴木孝拓(名大・環境学),林希一郎(名大・エコトピア),大場真(東農大・地域環境),李鋭(名大・工),稲垣友里(名大・工)

都市緑地は気候調節、大気浄化、二酸化炭素の吸収などの多様な生態系サービスをもつ。都市域での緑地は、生態系サービスを供給する貴重な資源であり、持続的な利用や生物多様性保全を環境計画から検討する上でも不可欠といえる。一方、生態系サービスという観点から緑地のもつ機能を網羅的かつ広域に評価する研究は少なく、また評価指標も開発途上である。

本研究は、三大都市圏の中枢都市のひとつである名古屋市を対象に、衛星画像情報から都市緑地のもつ生態系サービスを、GISを用いて定量的に推計し、その評価指標を提案するものである。まず、衛星画像(ALOS, AVNIR-2)から正規植生指数(NDVI)や教師なし分類法(ISO-DATA法)を用い、市内の緑地を抽出・分類した。また、既住研究を整理し、二酸化炭素吸収機能や土砂流出削減機能、食糧供給等の各サービスをGISにより空間的・定量的に評価し視覚化した。さらに、統計手法により各サービスを統合しうる評価指標を開発し、都市緑地からうける生態系サービスを分類・解釈した。

本研究は、都市緑地の供給する生態系サービスを定量的かつ網羅的な推計方法を整理し、提案することができた。この推計方法は衛星画像情報に基づき、より広域で空間的に生態系サービスを推計でき、土地利用や植生図などの地図情報が未整備・アクセスが困難であるような途上国にも適応しうる評価手法である。また、GISによる視覚化や統計的な統合方法により、解釈の容易な評価方法を提案することができた。現状の都市緑地に対し、各生態系サービスを推計しその資源的価値を把握するとともに、環境計画の一資料となる手法といえる。


日本生態学会