| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-193 (Poster presentation)
イノシシ(Sus scrofa)は他の大型哺乳類と比較すると、足が体重と比べて短いため、雪が深いと活動が困難となり、積雪30cm以上の日が70日を超える北陸~東北地方には生息できないと考えられていた。しかし、積雪量が3mを超える 新潟県十日町市では、1995年頃からイノシシの生息痕が報告されている。新潟県では1978年にはイノシシの生息は確認されなかったが、2003年に生息が確認され、2004年度は20頭だった捕獲頭数が、2012年度には669頭まで急増した。そこで本研究では、新潟県で定着しつつあるイノシシの分布に積雪が与える影響を評価し、今後の分布域拡大における積雪の影響について考察した。 本研究では、国土数値情報のデータと、LANDSATから作成した独自の土地被覆図を使用して解析を行った。捕獲頭数は、水稲共済損害評価に係る獣害申告データを使用した。ハンターマップの5kmメッシュごとに、広葉樹林、針葉樹林、水田、畑地、都市部(各々の項目が占めるメッシュ内の面積)、積雪量、標高、傾斜角度等の地形情報について、GISアプリケーションを利用して抽出した。メッシュ内の捕獲頭数を従属変数とし、イノシシの行動に影響を及ぼすと予想される環境要因を独立変数として選択し、負の二項分布を仮定した一般化線形モデルを作成した。
その結果、メッシュ内の畑地の面積が多く、都市部の面積が少ない、傾斜が急な低標高地では捕獲頭数が多くなる傾向が見られた。この結果から、新潟県のイノシシは比較的積雪量の少ない海岸寄りの山際付近で多く捕獲されていることが示唆された。本結果と過去の積雪量と被害の拡大状況、捕獲効率等の結果から、今後のイノシシの分布拡大に積雪が与える影響について考察を行う。