| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-194 (Poster presentation)

福島潟周辺水田におけるオオヒシクイの好適採餌環境選択

*松隈詩織(新潟大 自然科学),布野隆之(兵庫県立 人と自然の博物館), 大関幸織(新潟大 農),望月翔太(新潟大 自然科学),石庭寛子(国立環境研究所),石間妙子(福岡県保健環境研究所),関島恒夫(新潟大 自然科学)

オオヒシクイは越冬のために日本へ飛来する大型水禽類であり、環境省指定の準絶滅危惧種である。日本に飛来する本種越冬個体群の約7割は、新潟県の福島潟をねぐらとして利用し、日中には潟周辺の水田で採餌を行う。近年、潟周辺水田において圃場整備や商業地開発が進行しており、好適採餌環境の消失が懸念されている。越冬個体群を保全するためには、選好する採餌環境の特徴を明らかにした上で、福島潟周辺地域においてその特徴を備えた環境を予測し、優先的に保全していく手続きが必要である。そこで、本研究では、本種が利用する採餌環境の特徴を景観レベルで明らかにし、環境選択を反映する統計モデルを構築することで、福島潟周辺に分布する水田地帯から好適採餌環境の抽出を目的とする。

福島潟を中心とした半径約7kmの範囲の水田帯において、2008年〜2013年の5年間にわたり、11月上旬から翌2〜3月まで調査を実施した。調査地域において、ラインセンサス法により本種の採餌ポイントを特定した。環境要因は16変数を選定した後、変数選択を行い、最終的に、福島潟までの距離、標高、水田の排水性などの計7変数が選択された。採餌位置データを応答変数に、環境要因を説明要因として、MaxEntを用いた解析を行った。

本種の採餌環境選択には、越冬前後期ともに、福島潟までの距離と水田排水性が大きく寄与しており、潟に近接し、排水性が良好な水田の選好性が高かった。また、存在確率0.75以上の好適採餌地域は局所的であり、その面積は極めて少なかった。以上の結果をもとに、本講演では、福島潟周辺における本種の保全策について提案する。


日本生態学会