| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-198 (Poster presentation)
なぜ生物多様性が形成されるのか。このメカニズムを解明するため、狭い空間スケールで大きな多様性の変化が観察できる標高傾度を用いた研究が世界で広く行われてきた。現在では、これまでの研究を集約しメタ解析が行われ、一般性の追求を目指している。しかし植物の標高に沿った多様性に関して、これまでの研究は熱帯域を中心に行われており、これにより熱帯にバイアスがかかった誤った一般性をもたらす可能性が示唆されている。そこで本研究では、温帯域の標高に沿った維管束植物種の多様性パターンとそれに関わる非生物学的要因を明らかにすることを目的とした。
本研究の調査は長野県植物誌資料集CD-ROMを用いた。この資料集には長野県の維管束植物の標本や観察記録が約40万点集約されている。この中で標高が記録されている標本情報155666点を抽出し解析を行った。これらを種子植物(木本)・種子植物(草本)・シダ植物に分類し、標高100m毎に種数を整理した。さらに各種を分布する標高幅(狭い: >500m、中間: 500~1500m、広い: >1500m)で分類し、標高100m毎に種数を整理した。標高に沿った多様性パターンに関わる非生物学的要因として、気候的要因(気温・降水量)と空間的要因(標高帯の面積・Mid-domain Effect)の影響を解析した。
標高に沿った多様性パターンは、木本・草本・シダ植物とも似た傾向(標高600mから1000mでピークを持つ一山型)を示した。多様性のピークは分布標高幅で分類した種群ごと異なり、分布幅の狭い種の多様性のピークは低標高(600m前後)であったが、分布幅の広い種のピークは中標高(1500m前後)であった。多様性に関わる要因として、空間的要因の面積が特に主要な要因であることが考えられた。また、分布幅が異なると影響を受ける要因が異なることが考えられた。