| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-199 (Poster presentation)
琵琶湖は約400万年に形成された淡水湖であり、多くの海浜植物(淡水エコタイプ; FW)が生育する独自の生物相を形成している。その湖岸に生育するハマエンドウ(Lathyrus japonicus)は、海岸タイプ( CS)との間に遺伝的・生理的な分化が報告されている。特に相互移植したエコタイプは異環境において光合成速度が低下していたため、双方はともに生育地に適応していると考えられた。湖岸と海浜は塩ストレスの有無が異なり、湖岸では多くの植物体が被食されていたため、エコタイプ間における環境応答への違いが考えられた。そこで本研究では、相互移植における植物体の成長量・被食度・植物体内の塩蓄積を明らかにすることで、エコタイプが生育環境に適応しているかを検証することを目的とした。エコタイプはともに異環境において成長量が低下し、FWは海浜でCSよりも塩の蓄積が大きかった。また、CSは湖岸でFWよりも多く被食される傾向にあった。さらに、植物ホルモン(アブシジン酸(ABA):塩ストレス等に応答し、気孔を閉鎖させる;ジャスモン酸(JA):耐虫防御に反応する)を測定したところ、FWは海浜でCSよりABA濃度が高い一方、CSは湖岸でJA濃度が有意に高くなった。よって、FWはABAを介した気孔の開閉により成長が抑制されたことが示唆された。一方、CSが湖岸で成長量を低下させた要因の一つとして、被食の影響が考えられた。このように生育地特有のストレスは、エコタイプの分化を促進させる要因になりうることが示唆された。