| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-200 (Poster presentation)

中山間地における放棄水田がノジコの繁殖に与える影響

*出口翔大, 箕口秀夫(新潟大学大学院・自然科学研究科)

山地の多い日本では中山間地域が国土面積の73%を占めている。また,当該地域の耕地面積は全耕地面積の40%を占め,日本の農業において重要な位置にある。しかし近年, 中山間地域では条件の悪い土地基盤と労働力不足などが重なり,水田の放棄,土地の荒廃が問題となっている。放棄水田の増加はサシバやツバメなど一部の鳥類の繁殖に負の影響を与えるとされている。ノジコは夏鳥の鳴禽類である。本種の繁殖地として世界中でも日本のみが知られており,繁殖期には本州中部以北に局地的に分布する。新潟県南部の中山間地には本種が多く生息し,鳥類群集における相対優占度も高いが,環境省や新潟県のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。主に生息地の破壊が,絶滅が危惧される原因の一つに考えられている。しかし,水田放棄などの中山間地の土地利用の変化がノジコの繁殖環境の変化を通し,その個体群動態に与える影響はほとんど明らかになっていない。

そこで,本研究では,近年増加している放棄水田がノジコの繁殖環境に与える影響を明らかにすることを目的とした。野外調査は新潟県の中山間地における放棄水田地帯と耕作水田域,及び養鯉池域(新潟県の中山間地域で特異的な水田を転換させた土地利用)で行い,本種のなわばり密度とそれぞれの土地利用形態との関係などを比較した。

その結果としてノジコのなわばり密度は,放棄水田域で多い傾向が認められた。その一因として,当該地において特徴的な本種の営巣環境(湿性植生)が考えられた。


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