| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-201 (Poster presentation)
アカエイは干潟を採餌場所として利用しており、採餌の際、底質を掘り返すことで埋在する餌生物 (主に十脚甲殻類) を捕食する。その結果、干潟上には半回転楕円体状の摂餌痕が残る。この一連の過程によるベントス群集への影響には、餌生物に対する直接的なものと、他のベントスに対する基質攪拌を介した間接的なものが含まれる。採餌場所は干潟全域で均一ではないので、基質攪拌量には空間的異質性が生じると予測される。これまで基質攪拌量の定量は、現地での歩行調査が主流であったが、干出時間の制限により干潟全域を網羅することが不可能であった。本研究は、航空撮影手法と歩行調査を組み合わせることで、基質攪拌量の干潟全域 (11-ha) における空間分布を明らかにすることを目的とした。基質攪拌量は干潟沖側の低地盤域で比較的大きく、高地盤かつ餌生物が比較的高密度で存在した干潟南東部で小さかった。摂餌痕を面積に基づき6グループ (サイズ順にG1―G6) に区分し、それぞれの空間利用パターンを比較した結果、アカエイの個体発生に伴った変化が確認できた。一般化線形モデルによる解析の結果、採餌場所の選択は、小型個体 (G1) は餌密度に反応し、G2―G3は比較的広範囲を利用し、G4を境に低地盤依存へと切り替わった。この傾向は、小型個体は採餌効率を高めるために餌生物が豊富に存在する高地盤域を利用したが、大型個体は座礁リスクを低めるために低地盤を利用するようになったことを示唆している。基質攪拌量は、G1―G6が採餌場所として利用可能な低地盤域で大きく、G1のみ利用可能な高地盤域で小さくなったと考えられる。結論として、採餌場所の空間的異質性は、基質攪拌量を空間的に異ならせていたことが明らかとなった。