| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-202 (Poster presentation)

西中国山地における人口動態と土地被覆の変遷に関する時空間評価のGIS解析

*金城泉(広島大・総合科学部), 今井優((株)プレック研究所), 戸田求(広島大院・生物圏)

西中国山地は、古くから人々が森林を基盤に居住空間を設けた地域である。本研究では、西中国山地の一山村地域である広島県旧戸河内町(現安芸太田町)を対象に、明治から平成における土地被覆の変遷について地理情報システム(GIS)を用いた時空間評価を行い、これらの土地被覆の時空間的変遷へ及ぼす各時代の社会情勢と人口動態の影響に関する要因解析を行った。

土地被覆の空間分布変化の結果から、明治期から昭和初期にかけて広がっていた広葉樹林が、昭和中期に混交林(無秩序に広葉樹と針葉樹が混在した森林)となり、その後、広葉樹林、針葉樹林、しの地、荒地へとモザイク状に変化していったことや、明治期より集落や交通路が整備された地域では、平成期まで土地被覆の大きな変化はなく、周辺地域の自然との関わりが長い時間をかけて維持されていたこと、がわかった。また、人に利用されず放置された森林も広がっていた。この土地被覆の変遷には、各時代の社会情勢や人口動態が大きく影響していたが、これらの要因に加え、人の自然に対する環境意識の欠如も、現在の土地被覆の形成に影響を及ぼす要因であることが示唆された。

現代の山村地域が抱える社会問題の一つに、放置林への対策と取り組みが挙げられる。本研究では、この課題の解決に向けて森林利用形態データを用いた解析を行い、対象地域内で最も優先的に対策がとられるべき放置林区を特定した。今後、地域における森林の保全・管理はその地域だけでなく、国全体で取り組む必要である。その際、現存する多様なデータベースを活用し空間的に放置人工林の可能性が高い場所を把握することが有効であり、これにより林業に視点をむけた山村地域の活性化を導く足掛かりになることが期待される。


日本生態学会