| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-203 (Poster presentation)
都市景観には生物多様性保全上有効とされる残存緑地は限られ、また都市の土地利用のほとんどが人工構造物で被覆されている。
本研究では、都市に普遍的に存在する「建物間隙」で、湿潤で狭隘な環境にも生育するシダ植物の分布とその規定要因を調査した。建物間隙2,373点の調査プロットを設置したところ、シダ植物の10科29種が出現し、上位出現種は以下の4種であった:スギナ(出現確率54%)、クサソテツ(8%)、オシダ(6%)、ヘビノネゴザ(6%)。
地上被覆物が最も重要な要因であり、砂礫地は路傍生のスギナの出現確率が高かったが、その他の種はコケ地で出現確率が高かった。山塊からの距離はスギナの出現確率を高める一方で、その他の種の出現確率を低下させた。それ以外の分布規定要因として、造成年代、日射量、用途地域区分が挙げられた。
本研究結果は、建物間隙のようにまだ我々がその価値に気づいていない「隠れた生息地」が都市内に存在しうることを示唆している。今後、都市生態系における隠れた生息地が持つ価値を明らかにしていくことは、緑地のみに依存した従来型の保全政策とは異なる、新たな保全政策へとつながるだろう。