| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-206 (Poster presentation)

鳥類にとっての都市の透過性:モビングコールとサーキット理論を用いたアプローチ

*島崎敦(北大・農),山浦悠一,先崎理之,藪原佑樹,赤坂卓美,中村太士(北大・農院)

分散は生物の分布を制限する重要な生態学的過程であり、生物多様性の保全が望まれる分断化景観では、分散過程の解明が特に求められている。都市は典型的な分断化景観であり、舗装や宅地など、移動コストが異なると考えられる様々な土地利用が入り組んで存在している。このようなモザイク状の景観における生物の複雑な移動分散経路を推定する手法として、電気回路上の電流を生物の移動に見立てるサーキット理論が近年提案されている。本研究では、このサーキット理論を用いて、都市における鳥類の分散経路を推定した。

まず、都市を構成する主要な土地利用下で、スズメ目の森林性鳥類6種を対象種とし、鳥類を誘引するモビングコールの再生実験を行った。ロジスティック回帰から鳥類1個体が各土地利用50 m先まで渡る確率(移動確率)を推定し、(1-移動確率)を各土地利用の移動コストとした。次に、札幌市街地の25 km2の範囲における50 m解像度の土地利用マップに移動コストを割り当て、コストマップを作成した。このコストマップにサーキット理論を適用して、札幌西部の山塊から都市緑地である北大植物園までの鳥類の移動経路を推定した。

モビングコール再生実験の結果、草地、舗装といった開放地は鳥類の移動確率は低いが、樹木の存在が移動確率の向上に寄与すること、宅地は移動確率が比較的高いことが明らかになった。サーキット理論を適用した結果、山塊-植物園間を移動する鳥類は、北に迂回する河畔林コリドーよりも、両者を介在する市街地を主に利用すると推定された。これらのことから、市街地の土地利用(街路樹の植栽など)は、鳥類の移動分散を考慮した都市計画を行う上で重要であると考えられる。


日本生態学会