| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-209 (Poster presentation)
近年、非地域性個体が植栽されていたことが分かってきた。非地域性個体の植栽は、外来種や園芸種のように都市近郊の二次林に逸出し、種組成を変えるなどの影響を与えるだけでなく、遺伝的撹乱や、地域性個体との置き換わりなどが生じる可能性があり問題である。このような遺伝的な影響を防ぐために、非地域性個体が植栽や逸出などによって生育しているか明らかにする必要があるが、造園植物の地域性や、非地域性個体の生育の実態についての知見は少ない。そこで本研究では、造園植物の地域性および非地域性個体の生育を検討するために、コブシを例に、埼玉県所沢市周辺の二次林に生育するコブシと市街地に植栽されたコブシの遺伝的特徴を明らかにすることを目的とした。
調査では、所沢市周辺の二次林と市街地の植栽よりコブシの葉を採取した。また他の地域とも比較するために、全国より6か所を選択し、コブシの葉を採取した。川島ら(未発表)、Setsuko et al.(2005)を参考に、3領域の葉緑体DNAと9座の核SSRを使用して、それぞれ遺伝解析を行った。
解析の結果、葉緑体DNAの変異により3つのハプロタイプに分けられた。このうち2つのハプロタイプの分布は川島ら(未発表)と同じ傾向となった。しかし、1つのハプロタイプは所沢市周辺でしか確認できなかった。さらに二次林のみならず植栽でも確認された。また核SSRより遺伝的距離を算出し、主座標分析を行ったところ、調査したどの地域とも異なる特徴をもつ個体が確認された。このため所沢市周辺に非地域性の遺伝的特徴をもつ個体が生育している可能性が考えられた。しかし、本研究では全国のコブシの系統や、植栽個体の遺伝的特徴を把握しきれていない。そのため非地域性個体の生育の実態を確実なものとするためには、全国的な調査と、植栽個体の細かな調査が必要になる。