| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-210 (Poster presentation)

琵琶湖における淡水魚カマツカの形態変異

*遠藤千晴(奈良女子大・理),富永浩史(関西学院高等部),三品達平(京大院・理),和田恵次(奈良女子大・理),渡辺勝敏(京大院・理)

本研究では、底生魚であるカマツカにおいて、琵琶湖内で形態変異がどのような形質で生じているのか、またそれがどのように環境と関連しているのか明らかにすることを目的とした。琵琶湖の沿岸部における地形的特徴や底質環境が非常に多様性に富むことに着目し、大浦・彦根・守山・和邇・安曇川の5地点を調査地として、各地点21個体~33個体について各部形態形質の定量化と地点間での比較解析を行った。その結果、岩石湖岸から急激に泥質の基質に変わる底質変化の激しい大浦の個体では、体形や頭部形状、吻長、口のサイズといったあらゆる形質において幅広い変異を示す特徴がみられた。開けた地形に砂浜・砂礫地帯が広がる彦根や和邇の個体では、いずれも流線型をした体形に細長い頭部をもち、吻が長く尖る特徴がみられた。人工構造物により一部の沿岸が改造されている守山の個体では、体がやや側方に押しつぶされた形をしており、頭部は全体的に小さく、口や吻も小さい特徴がみられた。琵琶湖における主要な流入河川の注入口であり、河口に大規模な三角州が形成されている安曇川の個体では、体はわずかに背腹方向に押しつぶされ、また頭部も同様の方向に押しつぶされた形をしており、吻はやや短く口は大きいという特徴がみられた。一般に、魚類の体形は流線型になるほど水の抵抗が小さくなり、背腹に押しつぶされた形になるほど水底での安定性が増す。また吻は本種の摂餌行動の特徴を反映しているとみられる。これらの結果から、琵琶湖における本種の形態変異は主に遊泳性や摂餌に関わる形質において生じており、またそれは沿岸部における地形的特徴や底質環境と関連した変異であることが示唆された。


日本生態学会