| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-006 (Poster presentation)

種分化様式の違いに着目したファンフェルナンデス諸島固有植物の遺伝的多様性の時空間的変遷

*高山浩司(東大・博), Patricio López Sepúlveda(コンセプシオン大),Tod F. Stuessy(オハイオ大)

島嶼生物学の重要な問いに、島の生物多様性の時空間的パターンを決める要因は何かという問題がある。MacArthurとWilsonは動的平衡理論で、島の面積と大陸からの距離、生物の移入率と絶滅率が、島の生物種数を決める主要因であることを提唱した。以来、様々な研究が展開され、海洋島のように大陸から遠く離れた島では、島内で生じる種分化も生物多様性に関わる重要な要因であることが指摘されている。

系統進化のパターンに注目すると、海洋島で生じる種分化には大きく分けて2つの様式が見られる。一つは適応放散に代表されるcladogenesis(分岐を伴う種分化)で、島に侵入した祖先が複数の種に分化している様式である。もう一つはanagenesis(分岐を伴わない種分化)で、島に侵入した祖先系統が分岐せずに時間と共に変化し、母種とは異なる種に分化している様式である。種分化様式の違いは新しく生じる固有種の数だけでなく、種内の遺伝的多様性のパターンにも影響すると予測されるが、両者の違いに着目した実証研究はほとんどない。

本発表では、チリのファンフェルナンデス諸島の固有植物を対象にした研究成果を発表する。マイクロサテライトとAFLPマーカーを用いた集団遺伝学的解析で、cladogenesisにより分化した固有種は、種間での明瞭な遺伝的分化が見られ、種内の遺伝的多様性が比較的低いことが示された。一方、anagenesisにより分化した固有種は、集団間分化は全く見られず、種内に高い遺伝的多様性を蓄積していることが明らかとなった。以上の結果は、種分化様式の違いが固有種の遺伝的多様性に大きく影響していることを示唆している。


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