| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-008 (Poster presentation)

トクシマヤミサラグモ種群の種分化と交尾器進化

*馬場友希,大澤剛士,吉武啓,吉松慎一 (農環研),井原庸(広島県環境保健協会)

ヤミサラグモ属は体長2-3mmの林床性のクモで、交尾器形態の地理的分化に基づき、国内だけで50以上もの種が存在する。本グループの特徴として、オスの交尾器がメスの交尾器をはさむ構造をもち、その接触部位の形状が厳密に一致するという「錠と鍵」の対応関係が見られる。そのため、交尾器形態の地理的分化は、交尾器の不一致を通じて集団間の生殖隔離をもたらし、種の多様化に強く寄与するものと考えられる。しかしながら、交尾器形態の分化がどのような時間スケールで生じるか、また交尾器形態がどのような規則性をもって変化するかなど、交尾器分化の進化的背景については不明な点が多い。そこで本研究は、交尾器の著しい地理的分化を示すトクシマヤミサラグモ種群を対象に、集団間における交尾器形態の地理的変異と系統関係を明らかにし、その対応関係からヤミサラグモ類における地理的分化の実態を明らかにした。広域野外調査の結果、既知種のトクシマヤミサラグモが徳島県・高知県にまたがる四国東部地域に広く分布し、その周縁部の山地に、交尾器形態が明確に異なる3種の近縁種が分布することが明らかとなった。またmtDNA COIに基づく系統解析により、これまで一種とされてきたトクシマヤミサラグモが、交尾器形態が微妙に異なる5つの地理的集団に分かれる事も明らかとなった。これらの近縁種および集団を対象に、楕円フーリエ記述子に基づく輪郭形状の解析により雌雄の交尾器の形状を定量化したところ、各集団の交尾器形態の特徴をうまく記述する変数を生成でき、それらの変数を用いることで雌雄の「錠と鍵」の対応関係も定量的に示すことが可能となった。これらの形態情報と系統地理情報とを重ねることで、本種群における交尾器形態の地理的分化過程について考察する。


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