| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-012 (Poster presentation)
植物とその根につく菌類(菌根菌)との共生は最も普遍的な共生の1つである。植物は光合成により二酸化炭素から炭水化物を作り出し、菌類に与える。一方の菌類は土壌中のリン酸や窒素などを取り込んで植物に供給する。植物は菌類による栄養の供給が少ない場合には炭素供給を低下させ、菌類も植物からの炭素供給が少ない場合には栄養供給を減らすことが知られている。その一方で、菌類は光合成能力の低い実生の段階の植物とも関係を持ち、植物が定着するのを助けている可能性がある。
本研究では、植物が炭素だけを獲得でき、菌はリンだけを獲得できると仮定する。このような状況で、植物と菌の両方が相手に与える資源(炭素やリン)の分配をコントロールする場合を想定し、最適な資源分配について議論する。資源の分配が動的に変化できるとすると、自身が取り込んだ資源を全て相手に与えたり、逆に全く与えないような戦略も最適となる場合がある。取り込んだ資源の全てを相手に与えることで、小さい相手の成長を促し、将来的に相手から受け取る資源を増やす事ができる。
また、資源の一部を相手に渡す場合について、植物と菌が指数的に成長するとして最適な資源分配を求めた。この場合、資源の取り込みがどのように行われるかによって結果が異なる。資源の取り込みがある種の冪関数に依存すると考えると、相手への資源配分は相手には依らず一定である。しかし、資源の取り込みがより少ない資源によって決定されるような場合では、自分だけでなく相手の状態にも依存するようになる。自分で獲得できない資源が重要な場合には双方が相手への資源分配を増やす。一方、自分で獲得できる資源が重要な場合には、自分自身は相手への分配を減らすが、相手はより多くの資源を渡すようになる。