| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-014 (Poster presentation)
雌雄同体のカタツムリの中には「恋矢」と呼ばれる石灰化した槍状の器官を生殖器にもつ種類がいる。これらのカタツムリは交尾をする際、恋矢を相手に突き刺す行動を行うことで、メス器官での精子分解の抑制や自分との交尾後の交尾行動の抑制などを引き起こすことが知られている。このような恋矢を使った奇妙な交尾行動の進化に関する先行研究は豊富であるが、恋矢自体の獲得を可能にした発生メカニズムは全く不明である。そこで、恋矢形成を担う矢嚢(dart sac)と貝殻形成を担う外套膜(mantle)で発現する遺伝子を比較したところ、貝殻基質タンパク質(貝殻の材料)として知られるダーマトポンティン(Dermatopontin)をコードする遺伝子が外套膜だけでなく矢嚢においても発現していることが明らかとなった。本結果は貝殻の形成メカニズムを異所的に使い回すことで恋矢という新奇形質の獲得を可能にしたことを示唆している。