| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-021 (Poster presentation)
多くの種が過去の気候変動に応答して分布域を大きく変化させてきた。こうした分布域の変化は、種間の新たな接触と隔離の機会を生み出してきたと考えられる。異なる気候帯に分布する近縁種の分布域が気候変動によって接触したとき、交雑を介して互いの有益な遺伝資源を獲得してきたかもしれない。本研究では、温帯性キイチゴ(屋久島に分布の南限をもつモミジイチゴ)と亜熱帯性キイチゴ(屋久島に分布の北限をもつリュウキュウイチゴ)を用いて、過去の気候変動によって異所分布する近縁種の分布域が接触し、遺伝的な交流が始まっているか検証した。対象2種は、おおよそ100万年前に種分化し、日本に生育する野生キイチゴ(Rubus属)のなかでは、姉妹関係にあった。さらに、ニッチモデリングと遺伝子配列解析から、モミジイチゴは分布の南限を最終氷期以前から維持しているのに対し、リュウキュウイチゴは、最終氷期以後に分布を北上させ、屋久島においてモミジイチゴの分布と接触したと考えられた。屋久島では、高地に分布するモミジイチゴと低地に分布するリュウキュウイチゴの中間的な標高帯において、段階的な交雑帯が検出された。気候変動によって近縁種間に接触の機会が生じ、種の分布域のなかで最も局地的な環境を経験する分布域末端集団において、異なる環境に適応した近縁種との遺伝的な交流が確認された。