| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-022 (Poster presentation)
多くの有性生殖を行う生物において、雌雄間でその繁殖スピードの違いから、雌の多回交尾、交尾時間など繁殖に関する多くの事象において、利害が一致しない。結果、雌雄間で繁殖に関する最適戦略が異なり進化的な対立、性的対立を示す。雌に不利な雄の適応的変化に対し、雌は対抗適応し、雌雄間で拮抗的共進化が起こり雌雄の形質に軍拡競走が繰り広げられていると考えられている。コバネヒョウタンナガカメムシTogo hemipterusの雄は交尾の際に再交尾抑制物質を送り込むことで、雌の再交尾を遅延、抑制させている。それに対し、雌は免疫物質を作るなど何らかの対抗戦術を採ることで、再交尾抑制を巡る雌雄間の対立、軍拡競走が生じていると考えられる。本種は通常、短翅型で移動能力が低く、個体群間で遺伝子交流が少ないので、再交尾抑制を巡る雌雄間の対立(軍拡競走の程度)は隔離された個体群ごとで異なっていると考えられる。そこで、京都個体群と岡山個体群を交尾させ、雌の反応を調べたところ、交尾した雄が同一個体群由来か否かで再交尾抑制物質の効果や寿命において顕著な違いが検出され、岡山個体群の方で京都個体群より軍拡競走の程度が強い事が示唆された。そこで広島個体群を用いて岡山、京都個体群と交配した際に、どのような動態を示すのか調べる事によって、軍拡競走の強さを明らかにするとともに地理的関係について議論する。