| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-024 (Poster presentation)
性的対立は雌雄の配偶形質の進化をもたらす要因であり,大集団では交配頻度が高く,遺伝的変異が多く含まれるために,その作用がより強まると考えられる.一方,性的対立におけるオスの適応はメスの適応度を低下させ,結果として集団サイズの低下をもたらしうる.つまり,性的対立と集団サイズとの間には双方向の相反する過程がある.これらの過程は,これまで理論研究や実験集団を用いた研究によって個別に検証されてきた.しかし,野外においてどちらの過程が卓越するのかについての証拠は極めて少ない.
本研究では,性的対立による集団サイズの低下を支持する証拠を,アオオサムシの野外9集団を用いた比較研究により得た.アオオサムシを含むオオオサムシ亜属の交尾器には,雌雄の共進化による錠と鍵的対応がある.交尾の際には雌雄交尾器が機械的に結合するが,形態的不一致によって主にメス交尾器が傷つき,メスの適応度が低下することがある.雌雄の交尾器形態の不一致と,遺伝マーカーを用いて推定した有効集団サイズとの関係を調べたところ,オス交尾器がメス交尾器に対して相対的に大型化している集団では,集団サイズが小さくなる傾向があることが明らかになった.一方,大集団において,雌雄の交尾器サイズがそれぞれ大型化する傾向は見られなかった.これらの結果は,性的対立が野外集団において負の人口学的過程を駆動すること,そしてこの過程は,大集団においてより進むと期待される進化的過程を凌駕することを示唆する.