| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-025 (Poster presentation)

居候から寄生者へ:イソマイマイ科貝類における寄生性の進化

後藤龍太郎*,高野剛史,狩野泰則(東京大・大気海洋研)

海洋には、他の生物の体表や体内を生息場所として利用する多様な寄生者・片利共生者が生息している。寄生や共生といった生活様式は、様々な分類群で繰り返し進化していることが知られるが、自由生活性祖先種からの進化過程については知見が限られている。

イシカワシタダミCaledoniella montrouzieri Souverbie, 1869は、フトユビシャコ類の腹部に寄生する特異な生態をもつ巻貝である(Rosewater 1969)。この貝の寄生によって、宿主のシャコは抱卵できなくなるとともに、脱皮の頻度が減少することが知られている(Reaka 1978)。活発に動き回る甲殻類の体表に寄生する巻貝類は他に例がなく、近縁種も不明なことから、特異な生態を持つこの種がどのようにして進化してきたのかは謎であった。本発表では、分子系統解析に基づく知見から、その寄生性の起源や進化について紹介する。

イシカワシタダミは従来シロネズミガイ科に属するとされていたが、4遺伝子(18S、28S、16S、COI)に基づく分子系統解析の結果、イソマイマイ科の内群に入ることが明らかになった。イソマイマイ科には、自由生活性種の他に、甲殻類や環形動物の巣穴に居候する片利共生性の種が知られる。イシカワシタダミはこれら共生性の種と単系統群を形成し、なかでもシャコ類の巣穴に居候する種と姉妹群関係にあることが示唆された。これらの結果から、イソマイマイ科では、まず自由生活性から巣穴共生性の転換、続いてシャコ類の巣穴への進出、巣穴共生性から外部寄生性への転換が段階的に起こったと考えられる。さらに、本発表では外部寄生性の進化に伴う形態的特殊化(宿主の体表への接着機構の獲得など)についても紹介する予定である。


日本生態学会