| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-026 (Poster presentation)

多次元形質空間における進化的制約下で進化的分岐が起こるための一般的条件

*伊藤洋,佐々木顕(総研大・先導研)

選択圧に対する生物集団の進化的応答は、進化的制約の影響を受ける。さらに、互いに離れた2つの分類群は異なる進化的制約の下にあるために、同一の選択圧に対して異なる進化的応答を示すことがあるだろう。すなわち、長期的な進化動態では、進化的制約の変化を考慮する必要がある。本研究は、そのような進化動態を効率よく解析するための一般的な手法を開発した。その原理は以下の通りである。まず、進化的制約を「複数の形質軸からなる多次元形質空間において、稔性のある変異体が生じにくい方向があること」と定義し、それは形質空間の各位置に固有のものであり、位置の変化に対して滑らかに変化するものとする。次に、注目する集団付近の座標系を局所的に非線形変換することにより、全ての進化的制約を局所的に消失させる(リーマン基準座標系に対応)。後は制約が無いものとして解析すればよい。以上の原理はラグランジュの未定乗数法の形式で表現できるため、実際には座標変換せずに、あたかも制約が存在しないかのように方向進化を解析し、進化的安定点(ESS)や収束安定点、進化的分岐点などを簡単に特定できる。この手法は以下の項目によらずに同じように適用できるはずである:形質空間の次元、制約の次元、共進化する種の数、進化に伴う適応度地形の変化の有無。これまでの解析により以下の結果が得られた。(1)制約が強い場合には、制約の位置依存性が進化的分岐の条件に大きな影響を与える。(2)進化に伴う「適応度勾配の変化」と「制約の変化」は、座標変換に対して不変な1つの量「不変進化加速度」に由来し、座標系の選び方で2者への分割比が決まる。従って、これら2つの変化を個別に吟味するよりも、不変進化加速度を吟味する方がよい場合があるかもしれない。


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