| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-030 (Poster presentation)
なぜ病原体は宿主に強い病原性を示すことがあるのだろうか?宿主を殺してしまうと病原体自身の増殖の機会を減少させてしまうのにも関わらず,病原体は強毒性を発揮することがある.本研究では,細菌-バクテリオファージの宿主病原体系をモデルとして病原体の毒性の進化について解析を行った.
細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)は,2つのライフサイクルを持つ.一つは溶菌と呼ばれる強毒サイクルで,細菌に感染したファージは細菌内で増殖し,宿主細菌の細胞膜を破壊して細菌外に放出され(溶菌),新しい宿主細菌に感染する.もう一つは溶原化と呼ばれる弱毒サイクルで,感染したファージは細菌内で増殖しない.細菌の内部では細菌の染色体にファージDNAがプロファージとして組み込まれ,細菌が分裂する際に子孫に伝達されていく.
病原体の形質である溶原化率(感染を受けた細菌が溶原化する確率)と溶菌誘導率(溶原化した細菌が溶菌する確率)間のトレードオフがこの溶菌・溶原化の進化(=毒性の進化)に与える影響について適応動態を用いて解析を行った.本発表では、その結果判明した,溶原化率と溶菌誘導率の間に正の相関がある時に生じる進化的不安定性について報告する.