| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-062 (Poster presentation)
他個体との相互作用すなわち社会経験が、その後の行動に及ぼす影響は哺乳類や鳥類といったある程度の集合生活をおこなう生物では検証されてきた。しかし、普段単独生活をおこなう昆虫等では、オス間闘争以外に社会経験の影響は注目されてこなかった。オスを単独及び低密度で飼育するとオス間闘争において攻撃性が高まることは複数の種で知られている。もしそのような攻撃性が高まったオスがメスと出会うと、求愛ではなく攻撃をメスに仕掛けてしまい、交尾成功が著しく低下する可能性がある。そこで、フタホシコオロギGryllus bimaculatusを材料に、社会経験と交尾成功との関係を検証した。羽化直後のオスを単独飼育区、オス5頭飼育区、オス1頭メス4頭飼育区、オスメス5頭飼育区に振り分け、約1週間後に各処理区のオス1頭と未交尾メス1頭とを出会わせてメスへの攻撃性及び交尾成功を調べた。その結果、単独飼育区とオス1頭メス4頭飼育区のオスは、他の処理区のオスと比べて有意にメスへの攻撃率が高かった。また、メスに攻撃を加えたオスは求愛が遅れ、その結果として交尾成功が約50%低下した。これらの結果から、たとえ単独性の生物であっても、同性との社会経験が異性との交尾行動に重大な影響を与えることがわかった。