| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-068 (Poster presentation)
エビヤドリムシ類は等脚目の甲殻類で、十脚目甲殻類の鰓室または腹部に寄生し、宿主を去勢することが知られている。近年、北米太平洋岸において移入種と考えられるエビヤドリムシ類Orthione griffenisがアナジャコ類に寄生し、多くの地域で宿主の個体群が崩壊して干潟生態系に多大な影響が及んでいる。一般的に、エビヤドリムシ類は宿主の幼体に寄生を開始するとされるが、O. griffenisではむしろ成体に寄生を開始することが、高い寄生率と個体群の崩壊をもたらしている。しかし、宿主着底のタイミングが明らかになった鰓室性エビヤドリムシ類は10種程度しかなく、他の多くの種で研究が必要である。
高知県浦ノ内湾において、2008年7月から2012年6月まで、夏期は毎月、冬期は2ヶ月に1度、大潮時に採集を行い、ヨコヤアナジャコUpogebia yokoyaiを9612個体、コブシアナジャコUpogebia sakaiiを3339個体得た。エビヤドリムシ類は3種の寄生が確認され、Gyge ovalisはヨコヤアナジャコにのみ寄生し、寄生率は5%であった。Upogebione bidigitatusとProgebiophilus sp. 2はほぼコブシアナジャコにのみ寄生し、それぞれ3%と5%の寄生率であった。これら3種のエビヤドリムシ類の体長は宿主の甲長と極めて高い相関があり、宿主への着底が宿主の幼体であることが示唆された。また未同定のクリプトニスクス幼生が幼体〜小型個体からのみ得られたことも、上記の結果を支持した。これらのエビヤドリムシ類では、宿主への着底のタイミングが限られることによって、結果的に寄生率が比較的低く維持されているものと考えられる。今後はO. griffenisにおける、宿主の成体への例外的な着底メカニズムを明らかにする必要がある。