| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-075 (Poster presentation)
カシノナガキクイムシ Platypus quercivorus が運搬する病原菌 Raffaelea quercivora によって引き起こされるブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)が,日本各地で蔓延している.里山林ではカシノナガキクイムシが寄主として利用するブナ科樹木が優占することが多い上に,管理方法によってはナラ枯れの発生確率が更に高まるという指摘がある.そこで本研究では,里山林管理で実施されている受光伐(樹木の生育に必要な空間と光環境を確保するための間引き)がカシノナガキクイムシの寄主木選択にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした.
調査地は,兵庫県宍粟市のコナラ,クリが優占する無被害二次林約5haとした.2011年12月から2012年4月にかけて,受光伐を行ったところ,2012年7月にカシノナガキクイムシの穿孔が初めて確認された.調査地内に出現した穿孔木14個体とランダムに選んだ無被害木21個体を中心とした半径20mの円形プロット(計35プロット)を設置し,その円形プロット内に出現したブナ科樹木2052個体の樹種,胸高直径及び位置を記録して,立木及び伐採木密度を複数のスケールで算出した.
カシノナガキクイムシの寄主木選択のプロセスを“寄主木候補群”への飛来とその後の寄主木個体の選択に分けて考え,各プロセスに立木及び伐採木密度がどのように影響を及ぼしているのかを一般化線形モデルで解析した。モデル選択の結果は,カシノナガキクイムシが“寄主木候補群”としては伐採木密度の高い半径7m程度の大きさを選択していること,寄主木としては周辺2m程度の立木密度が高い個体を選択していることを示していた.伐採による環境変化が強く影響を及ぼしているのは,カシノナガキクイムシが飛来する段階であることが示唆された.