| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-082 (Poster presentation)
紫外線強度はふつう標高と共に上昇し、UVBでは1000mあたり5〜20%増加する。そのため山岳地域に生息する生物は、強い紫外線に適応するよう進化してきたと考えられている。それは水生生物も例外ではなく、透明度の高い湖沼では水面の10%以上のUVBが混合層に到達しており、プランクトン群集の組成に影響を及ぼすことが報告されている。UVBによる生物に対する最も明らかな影響はDNA損傷であり、生物は光修復やヌクレオチド除去修復によって修復することができる。しかし山岳地域の水生生物が平地種に比べて高い紫外線耐性やDNA修復能力を持っているかどうかは必ずしも明らかではない。高山性のミジンコであるタナカミジンコ(Daphnia tanakai)は山岳湖沼や高層湿原などに特異的に生息しており、平地湖沼のミジンコ種に比べてDNA紫外線損傷に対して強い修復機構を持つ可能性がある。また、DNA修復は酵素反応なので、その修復能力は温暖化や富栄養化などの環境変化に影響される可能性がある。これらの可能性を検証するために、タナカミジンコ及び平地性のミジンコ2種(D. dentifera、D. pulicariaを用いて室内実験を行い、UVB照射によるDNAの損傷程度と修復能力を調べ、さらにそれらに対する温度と栄養条件の影響を調べた(実験1)。
次に、UVB照射前後や修復過程後ではタナカミジンコの遊泳行動に違いがある可能性が実験1から見出されたため、UVB照射や回復過程段階での遊泳行動をビデオ撮影し、移動速度や角運動速度、ホップ回数を調べ、平地種との比較を行った(実験2)。
本発表では、これまでに明らかになってきたこと及び今後の展開について報告する。